登録NO 4052404

聖職の碑
新田次郎

講談社 昭和51.06：重刷
四六判318p。経年並。
〔版元品切取寄不可〕

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　新田次郎は信州諏訪の出身です（古本イエスタデイズの同郷）。
　昭和30年「強力伝」で直木賞受賞。特に山岳小説に新境地を
ひらき「縦走路」「槍ヶ岳開山」「八甲田山死の彷徨」などよ
く読まれています。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　この作品は映画を見た方も多いのではないでしょうか。（昭
和53年東宝作品　森谷司郎監督、出演：鶴田浩二・岩下志麻・
三浦友和・北大路欣也ほか）　　　　　　　　　　　　　　　

　風雨荒れ狂う中、伊那駒ヶ岳山頂近くの、はい松で覆っただ
けの暗い仮小屋の中で、寒さに震えながら疲労と睡魔に襲われ
次々と目を閉じ死の渕へと誘われていく中箕輪尋常高等小学校
の生徒たち…。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　大正２年８月２６日に起きたこの山岳遭難事件は、赤羽校長
以下生徒９名、教員１名計１１人の命を奪いました。
　新田次郎は、この遭難の模様を淡々と描いています。　　　
　しかしこの作品は単なる山岳小説ではありません。新田次郎
は綿密な現地取材に基づき（その取材記録は作品の後半部を構
成しています）、事件の背景…当時台頭しつつあった白樺派の
理想主義教育と明治の実践主義教育との対立を描き、その両者
の間でゆれ動き、登山を強行して自らも生徒を守ろうとして倒
れた赤羽校長、そして事件後、遭難記念碑の建立に駆け回り骨
身を削って１年後に病に倒れて亡くなった有賀先生らの聖職と
しての教師の姿を描いています。